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    インタビュー ] 書家「金森朱音」は、一文字の詩人ーインタビュー後編


    JUGEMテーマ:書道

     

    「前編の最後に、出産をしてから、作風が変わってきたところがあると話されましたけれど、そこのところをもう少し詳しく話していただけますか?」

     

    出産を経験する前の私の書には、ネガティブなものが多かったと話しましたが、それは社会に対しての反発や怒りがあったと思います。それを書で表現することで、自分の心のバランスを取っていたのだと感じています。

    金森朱音

    (Photo by Ayumi Yamazaki)

     

    更に、テーマの中心は「破壊」でした。跳びはねるような雰囲気で、筆もたたきつけるように書いていました。色彩的には、黒と赤が軸になっていました。今も、その反発心は失っていないのですが、破壊に対して創造に目が向いてきています。それは破壊と対になっている、アンサーソングのような感覚で、表現方法も柔らかくなってきた気がします。以前は白という色はあまり受け付けなかったのですが、今は白色のイメージも増えてきています。

     

    この作品を見てください。

    「生きる」(Photo by Ayumi Yamazaki)

     

    これは、「生」という字を数えきれないほど重ねて書いてあります。目に見えるものが全てではなく、視界からの情報だけにとらわれずに、指先から感じ、頭の中で想像するのと違ったものが見えるかもしれないということを伝えたかったので、あえて白いキャンバスに白い塗料で書いてあります。ひたすらに「生」という字を重ねて、盛り上がったり尖ったりしている部分に実際に触れて欲しかったので、手を入れて撮影しました。

     

    この作品を書く数週間前に、祖父が亡くなりました。祖父の死を受け入れずにいた私を救ったのがこの作品です。キャンバスに吐き出すことで、自分の感情と向き合うことできました。私にとって表現することは、生きる希望なのだと強く感じています。

     

    「生きる」の拡大写真 (Photo by Ayumi Yamazaki)

     

    私の書は、一般的な書とは違うかもしれません。「私にしか書けないもの」を書いていきたいと思い制作していますが、私は書道が好きなので書家としての力もつけていきたいと思い、一昨年初めて毎日書道展に出品しました。これは私にとって一つの挑戦でした。やはり、書壇からは認められないのではないか、私の技量はその域に達していないと判断されるのではないかと不安でした。出産後に創作活動を再開し、自分の中での再起という意味で、「起」という字を選びました。初めての公募展への出品でしたが、幸い佳作賞をいただくことができました。

    金森朱音「起」

    「起」  (photo by Ayumi Yamazaki

     

    女性のアーティストは、結婚・出産という活動が止まってしまう時間があるのが悩むところです。さらに、育児という時間的な制約もあります。ですから結婚・出産を選択して、アーティストとしてのキャリアを諦めるか、なんとか両立させるかになります。

    両立させる場合、家族の協力はもちろんのこと、社会の協力が欲しいですね。子育て支援についていえば、保育園の入園要件は、就労日数や就労時間が地域によって決められていて、現在は待機児童が多い為、職業がアーティストだけでは預かってもらうことはかなり難しいです。私の場合は、非常勤講師もしているので預かってもらうことができています。さらに家族や主人の両親も協力してくれているのでとても助かっています。

     

     

     

    現在、教員、主婦、母という三役をこなして、娘を寝かしつけた後、夜の11時過ぎから創作活動を始め、気が付くと夜中の2時頃ということがよくあります。自分のやりたい事なので苦ではないですが、一日の終わりに制作を開始するいうのは、モチベーションを持ち続けることが難しいです。学生時代より、制作時間はかなり減ってしまいましたが、書くことができない時間に頭の中で構想を練り、限られた時間の中で作品を作り上げる力が少しずつついてきたかなと思います。

     

    後輩たちにアドバイス

    自分の夢や、やりたいことを見つけてほしいです。自分はどうなりたいのか?その為にはどうするべきなのかを考えることが大切だと思っています。高校生や今の若い世代の人たちは、何においても「なんとなく」でやり過ごしている人が多い気がします。勿体ないです。

    私は高校生の頃、井上有一という作家に出会い、人生が変わりました。井上有一の作品には社会に対してのメッセージがあり、このような表現方法もあるのかと衝撃的でした。そこから私も表現者として書くべきものを書いていこうと決めました。この思いは今でも私の芯となっています。これからも「私にしか書けないもの」を目指し、日々表現していきたいです。

     

    井上有一:書家。19歳で公立小学校に奉職。定年まで教師をしながら、創造的な書作品に取り組んだ。絵画の領域に踏み込んだ作品で、国際舞台で活躍。没後も国内7つの美術館を巡回する回顧展が行われ、書の母国である中国の美術館が相次いで大個展を開催する。(https://intojapanwaraku.com/art/20170711/16638

     

     

     

     

    インタビューアーの独り言

     

    私が金森さんにお会いしたのは、201811月に小田原のお堀端画廊で開催されていた永田灌櫻さんの書展だった。以前から、永田さんは、金森さんの話をして、一度インタビューされては如何ですか?と話されていた。

     

    実際、お会いして感じたのは、金森さんの作品は、一文字の詩。金森さんは一文字の詩人のような気がしたのです。例えば、この「子」という作品をご覧ください。この子という字には、母としての慈しみというようなものを感じます。実に、優しい筆使いだと思います。丸っこさが、まるで赤ちゃんの手のくびれのような雰囲気。子供には、角が無いという気持ちをこの一文字で表しています。この字は、楷書でも行書でもない。全く、お高くとまっていない、しかし、心に響くものがあるのです。

     金森朱音 「子」

    「子」(Photo by Ayumi Yamazaki)

     

    インタビューの中で触れられていた「アーティスト専業の親の子は、保育園に入園する場合、認可が下りるのが難しく、ハードルが高い」という話も、大変気になります。現在の、日本の状況、社会の子育てに対する非寛容さ、アーティストや芸術を軽視している日本の政治行政の民度の低さを嘆くしかないのでしょうか? 声を大にして、変革を求めたいと思うのですが、如何でしょうか?

     

    そして、何よりも、今回紹介した金森さんの作品群。魂を揺さぶられるような「3.11悲鳴-3.11生死」。一人の書家として、書壇にはあまり見られない社会への訴えかけは、いつか必ず、日本に世界に受け入れられていくのではないだろうか。

     


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