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    インタビュー ] 朝倉ノニーさん ― シャンソンの訳詞を1000曲、今、新しいチャレンジを!


    JUGEMテーマ:シャンソン(CHANSON)

     今回のインタビューは、世界中で歌われているシャンソンの訳詞を、7年以上、インターネット上で発信されている朝倉ノニーさんです。この春、1000曲の訳詞というエポックメーキングを達成。そのお祝いを兼ねて、ご自身初のソロライブを開かれました。

                                           

    二つの文化と語学を理解して初めてできる訳詞。今回は、その苦労を伺いました。なお、ブログタイトルは、“朝倉ノニーの歌物語”という素敵な名前です。こちらが、そのブログへのリンクです。

    http://chantefable2.blog.fc2.com/

    Q: 最初に簡単な個人的なバックグラウンドをお伺いしたいのですが?

    生まれ育ったのは、大阪の阿倍野区と東住吉区です。大学は京都大学のフランス語学科に入学しましたが、結婚を契機に、大学をやめて東京に出てきました。アサヒグラフで京大の大学紛争を取材するので来ていたフリーランス・カメラマンの夫との間には子供が4人います。

    ただ、夫とは2004年に死別しました。癌でした。その夫が生きていた頃から、ヨガを始めて、色々な教室で学んだ後、ある組織の指導員になり、その後独立して自分のサークルを開き、70歳の今も、数カ所で教えています。50歳ぐらいになった頃、放送大学で、心理学を専攻しました。それが、フランス語をやりなおすきっかけになりました。放送大学が大学院を設立した時に、サンスクリット語の勉強もしてヨガに関係のあるインド哲学を学んで修士課程を卒業し、またその後、再入学して身体生理学関連を学び、3度目の卒業をしました。

    今回、特別に出していただいたン十年前にヨガを始めた頃の写真です。

     

    夫が亡くなったあと、アテネフランセで、更に、フランス語を学び直しました。そして2011年からYahoo!ブログでシャンソンの翻訳を始めました。Yahoo!での接続の具合が悪くなった2014年8月に、今のFC2ブログに切り替えて、それ以来、ずっと続けています。

    (パートナーの宇藤カザンさんとアミカル・ド・シャンソンの出演者の仲間たちと)

    今のパートナーの宇藤カザンとは、ブログを始めて2カ月ぐらいの時に、コメントをもらいました。そのコメントが、「千曲ぐらい、訳詞をされてください。」ということでした。そのコメントが、カザンとの付き合いのはじめでした。そして、今年2017年の春に、訳した曲が1000曲を超えました。2017年9月25日現在、1031曲の訳詞を完成しています。(10月15日現在1035曲(筆者))

     

    Q: 一千曲の訳詞というのは、相当、苦労されたと想像します。ノニーさんのブログは、シャンソンを歌う人たちは、必ず訪れて、原曲の歌詞を理解するようにされているとのことですね。又、その中で、感じておられる訳詞の難しさなども教えていただけますか?

    最初は、ゆっくりと進めていたのですが、2015年5月くらいに、70歳の誕生日までに、1000曲の訳詞を完成することを目指そうと思い立ったのです。その時に、数えてみたら、一日一曲ずつ、翻訳をしないと間に合わないので、それからは大変でした。 実際、外出する時には、予約投稿をしながら、毎日欠かさずブログのアップをしていきました。千曲の翻訳を完成した今は、少し、ゆっくりやっています。おかげ様で、現在、毎日平均で160人ぐらいの方が、私のブログを訪れてくださいます。

     

    訳していて、分からないものがあることもあります。最初に、思っていたのと全然違うのもあるし。又、これは、どっちの意味なんだろうと分からない場合もあります。そんな時は、自分で、実際に歌ってみると、「あ、そうか、これはこういう意味だ。」と分かることもあるのです。

     

    私の訳詞は、基本的に直訳をしています。日本語のシャンソンの中には、原曲とは全く違う意味になっている曲が、時々あります。果たして、これで良いのだろうかという思いは常に持っています。

     

    訳詞することをやめたいと思ったことはありません。ただ、歌詞の意味が分からなくて、ほったらかししている曲はあります。又、ブログですから、コメントを色々といただくのですが、必ずしも、一定の礼儀正しさを持っている人ばかりではありませんから、対応に苦しむことも何回かありました。逆に、この歌手のこの曲については、特に詳しいという方がおられて、色々なアドバイスをいただくこともあります。

     

    Q: 好きなシャンソンはどんな曲ですか? 又、シャンソンに対しての思い入れについて教えてください。

     

    誰もが、歌っている曲には、あまり興味がないんです。私は、ちょっとけだるい感じの曲が好きです。一番好きな曲は、ジプシー系のギター奏者のDjango Reinhardtが作曲した“雲 Nuage(ニュアージュ)”です。

     

    その“雲”を、YOUTUBEでノニーさんが歌っているのはこちらからどうぞ。ちょっとジャズのような感じの曲でもあります。

     

    著名なドラマーの野口さんに、私の立ち姿が、ジャズにはまっているといわれたことがあって、それには驚きました。亡くなった夫がジャズを大好きで良く聞いていたからでしょうか。

     

    NUAGE             

     

    Lentement dans le soir         夕暮れのなかをゆっくりと
    Le train s’en va           列車は去っていく
    Sur le quai son mouchoir       プラットホームの彼のハンカチは
    S’enfuit déjà            もう消えた
    Dans la glace comme un songe      車窓にまぼろしのように映る
    Le mur gris de sa maison        彼の家の灰色の壁が
    Sous le jour qui s’allonge       傾いた陽の光のもとで
    S’estompe à l’horizon                地平線にかすむ
    Un nuage s’étire                         家の青い屋根に
    Sur son toit bleu                       雲がたなびく
    En passant il semble dire             過ぎ去りながら雲は
    Un triste adieu                         悲しいさよならを告げているようだ
    Et tout ce que j’aimais                そしてわたしが愛したものはみな
    Lorsque le train vire                  列車が向きを変えると
    Dans un flot de fumée                 煙のなかに
    S’efface à jamais                       永遠に消え去る

     

    Q: 千曲の訳詞を完成した現在、取り組んでおられることは何でしょうか?

     

    千曲の訳詞の記念で、ソロライブを開きました。これは、とても大変でしたが、良い経験になったし、皆さんに支えられてきたからできたことです。

    (一千曲記念のソロライブで)

    今、自分が打ち込んでいることは、シャンソンの原曲の歌詞が持っているものを壊さないで、日本語で歌える歌詞にするということです。それをするのは、かなり難しいです。単純に訳すのはできます。しかし、それをメロディーに乗せるように直していくのですが、これは、また直訳するのとは全く別物です。

    先ほども話しましたが、今まで日本語に訳されて歌われてきた歌詞の中には、原曲から変えすぎているものが多いと思います。中には、全く違う内容になっているものがあります。

     

    あまりにも原曲の内容とかけ離れた邦題が付けられていることもあり、なんでこうなるのかなと思ってしまいます。私は、できるだけ、元の曲の歌詞に近づけたいとは思います。一方で、日本語で作られた歌詞の中にも、実に素敵なものがあります。

     

    音楽に合わせて翻訳することの難しさを、もう少し詳しく話しますね。例えば、ブリュッセル(Bruxelles)という曲があります。フランス語では、ブリュは音節一つです。しかし、それを日本語に直すと“ブ”と“リュ”二音節です。こういった音節の数の違いをメロディーに乗せるのはかなり工夫が必要です。日本語には、子音と母音で音が作られているという感覚がないんです。

     

    子音と母音についてですが、母音というのは、舌の先を下の前歯の裏に置いたまま口の形を変えるだけで音を出します。子音というのは、唇や舌をさまざまに使って音を作るのです。その子音と母音を組み合わせて、音を作っているのがフランス語や英語です。子音が連続するのだったら、間に母音が入っていないから、そんなに口を動かすことはありません。例えば、TRISTEという言葉は、原語では、音節は二つですが、日本語ではトリストという風になって、音節が4つになってしまいます。だから、仮名書きを読んで歌っていたのでは、ごつごつしてしまいフランス語になりません。

     

    そしてまた、訳詞の場合は、語彙の違いもあり、一つの音符に入る量が、日本語では少なくなってしまうのです。ですから、原曲の歌詞の内容を全部入れるのが難しくなります。例えば、JEというのは、一つの音符ですむのですが、私(ワタシ)という日本語は、3つの音符が必要になるか、一つの音符に詰めていれるかどちらかです。

     

    シャンソンでは、一つの曲毎に、大事に使われている言葉というのがあります。この曲はLの発音を、大事に使っているという風に。韻を踏むことはできないけれど、日本語でも音の響きを大事にするように、言葉を選ぶことはできるのかなと思います。

     

    自分が今まで翻訳した歌詞で、一番気に入っているのは、“私の街で”という曲です。エディット・ピアフが歌い、その後、ザーズが歌いました。父親が娘を娼婦にさせて、その娘が、街角に立っていくのですが、お客を取れなくて死んでしまうという哀しい曲です

    第四回の東京シャンソンコンクールでグランプリを取られた長堀昌恵さんが、私の訳したこの“私の街で”を歌われました。(最初のさわりを紹介します。)

    モンマルトルの片隅に
    わたしは住んでいた
    父さんは酔っぱらいで
    母さんは苦労してた
    病気のときは窓際で
    通る人をながめ
    日暮れになるといつも
    何かに怯えてた、、、

     

    また、10月6日に、日本訳詩家協会主催のコンサート《世界の歌を美しい日本語で》に出演することになり、自分の訳した曲を3曲歌いました。この“私の街で”、そして、先ほど、お話した一番好きな“雲”もあらたに訳詞して歌いました。

     

    Q: ノニーさんとカザンさんが主宰されている“アミカル・ド・シャンソン”について教えてください。

    今、取り組んでいることで、これは、訳詞とは関係ありませんが、私のパートナーの宇藤カザンと一緒に、“アミカル・ド・シャンソン”という歌会をやっています。アミカルは基本的に、シャンソンをフランス語で歌う会で、2012年から続けています。例会は、最初は月に一回でしたが、歌いたい方が集まってきてくれて、段々と月に二回になりました。ピアニストも充実してきて、前から弾いてくださっているアニエス晶子さんと関根忍さんに加えて、最近は、坂下文野さんと、太田游さんというピアニストも加わってくれたので、例会は月に三回になっています。 

    11月12日は、秋のシャンソンコンサートというのをやります。夏は、巴里祭に合わせて、コンサートを開いています。こういうコンサートをするのも、テーマを決めてやったりしながら、根付かせています。

     

     

    又、アミカルが主催するコンクールの東京シャンソン・コンクールも来年は五回目を迎えることになります。ただ、関西から以西の方の参加が少ないので、昨年から大阪ヴォーカルコンクールというのを主催しています。今年は、第二回を1130日に開催します。大阪は、シャンソンだけでなく、ラテンやカンツォーネでも参加できます。こういう風に、シャンソンを普及させるとは言いませんが、歌を歌うことを楽しむ人が集まる場所を色々作っていきたいと思っています。

     

     

    インタビューアーのコメント

    このインタビューシリーズも既に6回を数えています。今までは、和紙の生産に従事する方、又は、和紙を使ってクリエイトされる人たちへのインタビューでした。しかし、今回の朝倉ノニーさんはジャンルが違っています。しかし、何もないところから、新しい何かを創っていくところは、共通するものがあると感じます。現在、シャンソンの訳詞を1035曲完成。シャンソンというと、サントワマミー、枯葉などは有名ですが、奥の深いものだと、今回のインタビューを通して知ることができました。

     

    紹介記事にも書きましたが、日本の文化は、太古の昔から、海外のものを輸入して、それを自分たちのものに変えていったのです。空海だって最澄だって、唐に学んで、仏典を持ち帰って日本のものにしたのです。宋の文化を取り入れた平清盛、西欧文明に接して、その息吹を感じ取った織田信長、そして明治維新の日本人。戦後復興の日本。そうやって取り入れたものの中には、仏教、文化、絵画、書、和紙、色々なものがあります。ノニーさんの見つめている先には、そういった日本観があるのではないでしょうか?

     

    インタビューで聞いていて、驚いたのは、今ある日本語のシャンソンの中には、原曲の歌詞と全くかけ離れている詩があるとのこと。現在、ノニーさんは、それとは一線を画して、原曲の持つ意味をできるだけ残して、それを、日本語で歌えるように音符にという別の言語に載せていくということに、傾注されているそうです。その場合、語学としてフランス語と日本語が持っている音節の差などを考慮して作詞されているそうです。 私も、翻訳の仕事もしたことがありますが、これは、相当な難作業だと思います。又、本文中に、ノニーさんが話されていた母音と 子音が音を作ることの説明は、日本人一般がフランス語に限らず、語学を学び使っていくヒントになると思います。

     

    本文には書きませんでしたが、ノニーさんは、日本人の感性を活かせて歌えればと思っているとのこと。今回の浜松のコンクールでは、お母様からいただいた日本の着物でドレスを作って歌われたそうです。文中にも出てきた、雲という曲のイメージだそうです。日本人の特性を活かすという点では、フランス語で歌う場合でも声の出し方なりで、日本人の味を出しても良いのではないかと思っているそうです。

    又、自分の経済的利益には、全く、繋がらないけれど、月に3回のシャンソンの会を開催していることや、年に二回のコンクールを主催するなど、その活動の幅にも注目できます。クリエーターというと、芸術家・アーティストがすぐに頭に浮かびますが、芸術家でなくてもゼロから創造して、新しいものを作っているノニーさんのような方は、きっと、世の中には何人もいるはず。そういう人たちの活動を取り上げていくのも、このブログの特徴になるようにしていきたいと思っています。

    お母様から受け継いだ和服をイブニング風にアレンジしたコスチュームで歌われた(10月14日 浜松シャンソン・コンクールで。)

     

     

     

     

     



     

     

     

     

     

     


    コメント

    今回インタビューの対象者の行動力に感心拍手を贈ります。ばんじんが同意を惜しまないと思う。日本とフランスは近くて遠い。学校教育が英語中心で組まれているせいだろう。しかし雲、雪、枯葉、ヴヨロンが歌われる点で詩的感性面では類似性が高いと思う。
    例えば"NUAGZ"の詩はちあきなおみが歌う”喝采”とシチュエイションが似ている。プラットフォーム、残る男、列車で去る女、永遠の別れ。
    日本語訳がすすみフランスの詩の普及がなお行き渡る努力に”賛同”を惜しまない。
    合わせて既に10件弱の興味深いテーマと取り組む人々を発掘紹介する筆者に感謝をお伝えします。謝謝!
    • T .Nagasawa
    • 2017/10/24 12:22 AM
    T.Nagasawaさん、
    まずは、当ブログにいつもお越しいただき、更には、コメント、又、励ましの言葉、本当にありがとうございます。

    今回のインタビューの内容は、相当、難しいものでした。ただ、その難しさを、ノニーさんの分かりやすい説明をいただけたので、伝えることができていたらと思います。 この雲という曲の訳詞は、確かに喝采と共通するものがあるのかもしれませんね。国は違えど、自然に対する感じ方というのは、フランスでも日本でも共通するものがあるのでしょう。その感性が、日本でシャンソンというジャンルを、外国の歌の他のジャンルと違って、全世代的に浸透している原因なのかも。

    ノニーさんにも、このコメントの内容を伝えさせていただきます。
    • よっしー
    • 2017/10/24 11:06 AM
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