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インタビュー ] 「能楽はマインドフルネス」  金春流シテ方山井綱雄師のインタビュー 第一篇 


今回、ご紹介するインタビューは金春流能楽師の山井綱雄さんです。

 

筆者は、今まで能楽とは全く無縁でした。昨年の11月に、横浜の久良岐(くらき)能舞台で、山井師にインタビューをさせていただきました。さらに、昨年の年の瀬もおし迫った29日にお会いして、じっくりとお話を聞いてきました。山井さんは、NHKの大河ドラマ「真田丸」や「江姫」などでの振り付けもされた方です。江姫のオープニングでの上野樹里さんが手を合わせて舞いをす終える振り付けといえば、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 

多分殆どの人は、普通、能楽を見たことは一回あるかないかでしょう。正直に言って、筆者もそうでした。能楽とは縁遠い生活を送ってきた人生でした。しかし、山井さんにお話を伺うと、能に抱いていた精神的なハードルを取り除いてくれました。今回、山井さんは、全く能楽に触れたことのない、所謂、初心者にも分かるように、説明していただきました。

山井綱雄

 

能楽は、マインドフルネス

 

人間には、人間らしく生きるために必要なものがあると思います。医療が発達して寿命が延びていますが、こころを見つめ直しリフレッシュさせることが、現代では、置き去りになってしまっています。

 

「高砂」という演目があるのですが、主人公は住吉大社の神様のことです。能楽の中でも古い様式のものです。高砂は、ストーリーやドラマ性を楽しむものではありません。しかし、見終わった後に、モヤモヤ悩んでいたことやストレスがスッキリし、心が洗われるような感覚を感じていただけます。

 

能にはそういう作用があります。それが、他の芸術との決定的な違いです。これは能のルーツが神様や仏様に捧げるものであったというところにリンクしています。もちろん、能は新興宗教ではありません。遙か古からの人々の祈り、シャーマニズム原始宗教から繋がっているというところで、結果としてそうなっているのだと思います。

 

亡くなられたアップルのスティーブ・ジョブズやフェースブックの創始者のザッカーバーグは、日頃から座禅を組み瞑想をしている、というのは有名な話です。それは人間にとって、人間らしくいるために必要な時間だと彼らが認識していることに他なりません。今、世界の脳神経外科では、そうすることをマインドフルネスと言うそうです。能は、マインドフルネスを体験できる演劇なのです。

 

しばらく前に、NHKを見ていた時、日本の脳神経外科の第一人者の教授が、「公園などを散歩して、難しいことなど考えずに、景色を楽しみ、風や空の美しさを感じるだけで、それで十分マインドフルネスなのです。」と、仰っていました。その番組の最後に、その先生が、「日本には昔からマインドフルネスが存在していました。能やお茶など、あれはまさにマインドフルネスです。しかし現代の日本人はそういう事を忘れてしまっているのです。」と話されました。わたしは「やっぱりな」と、手をたたいて納得しました。能を知らない方が、たとえ舞台でやっていることが、全て理解できなくても、見終わった後に、なんとなく心がスッキリする・・・能にはそういった心を浄化する作用があります。

 

 

能は周りに迷惑をかけなければ、居眠りしても良い

 

そもそも能は眠くなるようにできています。夢現(うつつ)の世界を具現化していて、一種の催眠状態にするため、笛も地謡というコーラス隊も耳に聞こえない音をたくさん出している、と解明されています。出演している人もアルファ波が出てトランス状態になり、そういうのが客席にも伝わり眠くなります。実は舞台で、後見の人や地謡(コーラス)をしている人も眠くなります。眠くなってはいけない、ということはありません。

 

ある観客の方は、居眠りをしながらふと目を開けた時に、「ああ、能をやっているな」と舞台を見て、夢うつつを味わいながら、こっくりこっくりするのが至福の時間だと言われます。また、あるお客様によると、「不眠症の方は能を見ると一発で効く、よく眠れる。」と言います。「能楽堂に寝に行きましょう」などと言って、他の方を誘ってくださる方も実際にいます(笑)。必ず最後まで起きて見なければならない、というのは現代人の考え方です。ひとつの瞑想状態で、普段とは違う波動や空間に身を置くことができます。まさに能は異空間なのです。

 

 

能は「間」の芸術です

 

その異空間というのがお茶室にもつながります。お茶、能、禅、この3つは中世の時代に、密接に関わっており、その根本精神は一緒です。その根底の概念には、そういった「目にみえない何か」というものに、日本人のこころが存在しています。「目に見えない何か」というものに対して畏敬の念を持ち、「目に見えない何か」が大切だ、と考える感覚です。それが、「間」と言われています。まさに能は「間」の芸術です。「間」が抜けると“間抜け”なのです。「間」は何も無いのだけれど、決して無いわけではなく、そこに大きな意味があります。能の音楽では、音を出していない無声、無音の瞬間、空間である「間」を大切にしています。

 

日本の古典文化にも言えることですが、能の舞台では余白を大事にします。シテ(主役)、ワキ(脇役)、囃子方(笛、小鼓、大鼓、太鼓)がいてあとは何もありません。例えば雪が降ってきた、という設定でも雪は降らせませんし、赤々と山が夕日に染まるシーンでも、赤い照明を使うこともありません。シテが、舞台にポツンといて、周りに余白がたくさんあります。そこから先は見ている人の「想像力」が大切なのです。

 

このことを私は、よく絵画に例えます。西洋画は写真のように写実的でカラフルであるのに対し、水墨画は墨で書かれていて何もない空間があります。それは書も同じで、墨の濃淡と余白があります。その余白を大事にしています。そこは見ている人の想像力で埋めることによって、いかようにも見ることも描くこともできます。つまり、いかようにも解釈して良い余地を残しています。能もそうなのです。何もない部分は、見ている人の想像力で埋めてもらい、どう解釈していただいても構いません、という余白をわざと残しているのです。

 

例えば、能の「羽衣」という演目を鑑賞いただき、「三保の松原の景色はどんなでしたか?その絵を描いてください」と言うと、当然人によって違う絵が出来上がります。能はそれで構わないと思うのです。全てが正解なのです。また同じ羽衣を見るにしても、5年後、10年後、30年後・・・と見る方の年代、年齢、人生経験でも捉え方が違ってきます。それで良いのです。しかし、歌舞伎や現代劇ですと海岸、空、山、それらの色、形、全てが舞台装置や照明などで指定されています。

 

 

能舞台こそが異空間

 

能の舞台というのは、今でいうスピリチュアルな世界です。お正月だと上方に「しめ縄」を張ったりします。「結界」であるという意識の表れです。能の舞台に上がるには、必ず足袋を履かなくてはいけません。能の舞台の四本柱は、ただ単に屋根を支えるためでなくて、異質な世界、客席からは立ち入れない世界であることを区別するためにあるのです。

金剛流能楽堂

(能舞台は全て、四本の柱で囲まれている。)

 

五色の幕は、一説には陰陽五行からきていると言われています。「木火土金水」です。あの五色の幕の向こうにある異次元の世界から、シテ(主役)は橋を渡ってきます。長い花道のような廊下は、「橋掛り(はしがかり)」といいます。古い能では、舞台から、五色の幕に向かって、少し傾斜しています。黄泉の国といいますか、異界を表しているのです。「能面」という仮面をつけているのは人間ではないものを表しています。能が表現しているのは、人間ではない異次元の世界なのです。

 

久良岐能舞台

(久良岐能舞台の橋掛り)

 

ところで、余談になりますが、五色の幕の裏には、「鏡の間」という部屋があって、シテはそこで精神集中します。「鏡の間」には巨大な三面鏡があります。その前に座れるのは能のシテだけです。その鏡の前で、役を憑依させるのです。昔は、家元というリーダーだけがシテをやることになっていました。シテが舞台に出る時は、周りの能楽師は正座して送り出します。又、シテが戻ってくる時は後見が平伏して迎えます。しかし、現代では、経験の少ない若手でも、シテをやることがあります。そんな場合でも、全員、家元も長老も、正座して送り出し、そして出迎えます。能におけるシテというのは、そういう特別な存在なのです。

 

能舞台は、正式には北向きに建てられています。神様が北に存在していて、南を向いていらっしゃる、という考え方です。また、神様は目の前ではなく、正面席のお客さんの後ろのほう、にいてご覧になられているという考え方もあります。中世の時代になると、足利義満以降の天下人は、能を、権威付けに使っていたと言われています。

 

豊臣秀吉や徳川家康など以降の将軍や大名たちは、能舞台正面の後ろに鎮座して能を見物していました。特に秀吉は天下人になり、自ら能のシテを勤めてたりして、能を権威付けに利用したと言われています。

 

第一編は、ここまでです。第二編では、経験のない人が能を見るにはどうしたら良いのか、そして、能を習うにはどうすれば良いのかを聞いてみました。第二篇は、一週間後にリリースします。

 

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    書道 ] 「今をえがく書 かながわ」を見てきました。


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    横浜駅東口にあるSOGO百貨店の6階で開催されている

    「今をえがく書 かながわ」を見てきた。

     

    日曜日ということもあって、それなりに人が訪れてきていた。

    想像していたのは高齢者ばかりが訪れるかと思っていたが、驚いたことは年齢層の多様化。

    若い高校生ぐらいの観客もそれなりに多かった。

     

     

    この企画は間二日書道展第70回記念で、各地を巡回するらしい。

    70回といえば、初回は、戦後すぐ。

    毎日展は書道では、最高峰の書道展ときく。

    さすがに、新聞社の学芸部、文化部が力を入れているだけあって、

    出品している作品数も274点を超えている。

     

    各都道府県、新聞社、そして大きな百貨店が積極的に協力しているだけあって、

    書道に関しては、同じ日本古来からの芸術でも、社会に根付いている気がする。

    流派のピラミッドという古くからの集金システムへの批判もあるだろうが、

    こういう形で、若い人が参加しているのを見ると、

    それなりにワークしていると思う。

     

     

    又、そごう横浜とJRをつなぐ広場では、書道のパフォーマンスがあった。

    数年前に、「書道ガールズ!!!私たちの甲子園」という成海璃子主演の映画を見たが、

    映画になるような意外な新鮮さが書道にはあるのかもしれない。


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      当ブログについて ] 企業の中の国内派と海外派


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      前回、日本の歴史は、鎖国と開国の繰り返しであると説明したが、

      その二つの流れは、企業の中にも存在している。

      それが、国内派と海外派(国際派)である。

      例えば、自動車会社を例にとってみればわかる。

      国内でのビジネスは、工場での生産から、販売店での販売。

      それを統括する取締役がいる。

      この部門は、一定の利益をコンスタントに稼ぎ出し、強い影響力を持っている。

      ただ、少子高齢化の影響で、国内でのビジネスには天井が段々と低くなってくる。

      彼らの仕事は、お得意さん廻り、労務管理、工場での生産など決して派手なものではない。

      格好よくはないが、稼いでいる集団になる。

       

      一方、海外での輸出を中心とした販売網の拡充をしていたが、

      そこから、海外での生産に踏み切ってきた。

      今では、その海外ビジネスが自動車会社の利益の源泉となっている。

      当然、そこには、人員が投入されていく。

      英語の問題、文化の問題、法律の問題など、海外ビジネスは簡単ではない。

      そこに、携わる人間は、一朝一夕では作れない。

      そうすると、海外に専従するスタッフが増えてくる。

      今まで、国内でやってきた派手ではない泥臭い仕事を海外でやるのだから、

      彼らの苦労は大変である。

      その甲斐あって、今は、それが自動車会社の利益の大半を稼ぐようになっている。

      そして、アメリカの次は中国、更に、インド、アフリカと市場は広がっている。

      その専従してきた集団が、海外派となる。

      既に、いくつかの会社では、売上げも利益も海外が国内を圧倒している。

      そうなると戦略も、社内人事も海外派が握ってくる。

       

      こうして、二つの国内派、海外派という派閥に近い勢力争いが起こる。

      このような二つの流れが生じているのは、まさに、日本の歴史の縮図である。

      彩社は、商社、銀行、電機や自動車会社のような大企業だけだったが、

      今は、それが、中小の部品各社にも波及している。

      とにかく、親会社のトヨタや日産が海外に出たら、

      部品各社も出ざるをえない。

       

      民間は、そういう形で海外に出ていく開国をしているが、

      それでは、官公庁はどうであろう。

      霞が関の人たちは、圧倒的に国内派が多い。

      外務省以外で、海外赴任をするのは、エリートの留学か、NY,ロンドンなどの拠点だけ。

      話題を振りまいている財務省などでも同じである。

      国内派が圧倒的に強い霞が関と、海外に出ざるを得ない民間企業の間には、

      日本の歴史が持っている尊王攘夷と開国佐幕のスティグマが発生するのだ。

      国際的な動きに全く無知無関心の政策立案者が、

      民間企業のブレーキになっているケースが多い。

       

      この話は、和紙となんの関係があるのかと思われる読者もいるかもしれないが、

      これを理解しないで、和紙に将来は無いと思っている。

      市場は、海外にこそあるのだ。

       

      その話に進む前に、次回は、日本の政治家の中にある国内派と海外派(国際派)を考えてみたい。

       

       


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        当ブログについて ] 開国か鎖国か?日本の歴史。


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        日本の歴史というのは、開国と鎖国の繰り返しというのが持論。

         

        遣隋使を送った聖徳太子の時代からしばらく開国の時代だったが、

        推古天皇の時代は、白村江の戦いをする鎖国。

        奈良時代から、平安時代中期に遣唐使が廃止されるまでは、

        超開国の時代だった。

        それから、日本は、平清盛が宋との貿易で栄えるまで鎖国。

        そして、鎌倉時代後期から長い鎖国の時代。

        安土桃山で一気に開国に進んだが、ご存知のように、

        徳川幕府は270年も鎖国をしてしまった。。。

        明治維新は、文明開化、日本が西洋列強に負けないようにと開国に進む。

        しかし、昭和初期の第二次大戦で負けるまで、外国は敵。

         

        昭和20年に敗戦を迎えて、マッカーサーと共に、一気に開国せざるをえなかった。

        そして、そのまま、日本が国際社会の大切な一員として努力をしたが、

        どっこい、そうはさせないという尊王攘夷思想は、日本に残ってしまった。

        1990年のバブル崩壊とともに、日本は、内向きに向かった。

        そして、政治の主流を占めている勢力は、憲法改正を訴える。

        日本人は、憲法を自分で作るべきだという。

         

        さて、日本の鎖国の時代というのは、基本的に、戦争の時代。

        海外に戦争をしかけた時代もあれば、国内での戦国時代。

        唯一、江戸時代の鎖国は違って見えるが、国内に吹き荒れたのは農民への圧政。

        今の、北朝鮮の将軍様より酷かったのではないだろうか。

         

        一方、開国の時代というのは、明るさが満ちている。

        仏典を取り入れて、民を幸福にしようとした遣隋使、遣唐使。

        貴族政治に風穴を開けた平清盛、

        安土桃山は、ヨーロッパの科学、文明が雪崩をうって日本に入った時代だった。

        それと同じことが明治維新、太平洋戦争敗戦後の日本だった。

         

        さて、今、この現代はどちらなのだろう。

        私たちは、開国の中にいるのか、鎖国の始まりにいるのか?

        日本人の留学生は減少一途。英語力は、北朝鮮並み。

        一方、海外から日本を訪れた人は3000万人に迫っている。


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          当ブログについて ] さて、貴方の生活は?


          若い頃にこういうジョークを聞いた。

           

          世界で一番良い暮らしは、

           

          アメリカの住宅に住んで、

          イギリス人の趣味と

          フランス人の食事を楽しんで、

          日本人の奥さんを持つこと。

           

          ただ、それが、ひとつ狂うと、

           

          日本の住宅に住んで、

          イギリス人の食事をして、

          フランス人の趣味を持って、

          アメリカ人の奥さんを持つ

           

          それくらい、日本人の住宅事情は悪いけれど、女性は従順で、

          イギリス人の趣味は多彩だが、食事は不味くて

          フランス人の食事は美味しいが、趣味といえるようなものはないぐらい退屈で、

          アメリカ女性は、すぐに離婚だと騒ぐというのをからかったジョーク。

           

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            当ブログについて ] 和と洋どちらがお好き?


            和と洋の違いを楽しむことができるのは、日本の良さの一つ。

             

            和食   洋食

            和室   洋室

            和菓子  洋菓子

            和服   洋服

            和式   洋式

            和裁   洋裁

            和紙   洋紙

            邦楽   洋楽

            邦画   洋画

            日本酒  洋酒

            日本茶  紅茶

             

            基本的に、和の物が好きになるのは、ある程度年齢がいってからで、

            若い人は、洋の物が好きなことが多い。

            和食、和室、和菓子などがその典型だろう。

             

            ただ、その中で、洋が絶対に和より優れているのはトイレ。

            和式の便器は、もはや高齢者でも使わないようにしている。

            レストランなどでも和式トイレのある所には、リピーターが少ない。

             

            和が洋に押されているのは、その機能性が、現代社会に合っていないケースが多い。

            和服しかり、又、和紙しかり。

            紙を印刷して大量に消費するものと考えれば、和紙は洋紙には、太刀打ちできない。

             

            そして、そういった現代の生活様式に合っていないということで、

            消えていきそうなものが、日本には多い。

            でも、本当にこれで良いのかという見直しが行われているのも事実。

            生活は機能性だけで済むことではない。

            そういう動きは、逆に、海外から起こっている。

             

            和食の見直し。

            障子のある空間、和紙を使った行灯の柔らかい光、

            FUTONを毛布に代わって使っている人もいる。

             

            日本人は、和の文化をもう少し大切にしたらどうだろうと思う。

            この国が何世紀にもわたって育んできたものには、もっと価値があるのでは。

            洋室にカーテンではなく、障子を使ってみたら。

            電気スタンドや、天井からの直接光ではなく、和の灯りを入れてみたら。

            油絵ではなく、書を飾ってみたら。

            オペラではなく、能楽を見にいってみたら。

            ケーキに紅茶も大好きだが、たまには、抹茶に和菓子は如何。

             

            そんな生活様式を簡単に手に入れることができるのは、日本に住む人たちだけかも。

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              インタビュー ] 太田こよみさんー京都の和紙の店「楽紙舘」店長さん


               

               今回のインタビューは、京都の和紙と和雑貨の店の楽紙舘の若い美人女性店長の太田こよみさんです。最初にインタビューをお願いしてから約半年、去年の12月に、ついに実現しました。       

               

              太田さんが働いておられる楽紙舘とは、私ども「和紙はお好き?」も、お世話になっています。太田さんは30代前半、京都の有名な和紙と和雑貨のお店、楽紙舘の店長をやっておられます。女性の社会進出は、日本では、なかなか進んでいないのが現実ですが、太田さんは、輝く日本の女性の代表選手の一人です。

               

               その楽紙舘のお店は、京都文化博物館の入っているビルの高倉通側の一階に面しています。三条通りにも近く、まさに、京都の商業地の中心界隈です。

               

              (楽紙舘の外観、京都文化博物館の入っている一階の北東側のコーナーにある。入口に近いところに和雑貨、奥には、日本中の和紙を販売しています。)

               

               

               

               

              “大学を卒業して10年。今、仕事が楽しいです。” 

               

              大学は、国文科で古文、特に源氏物語が卒論でした。美大の卒業ではないし、こういう風なキャリアになるとは思っていませんでした。楽紙舘の和雑貨のメインの商品に、源氏物語をあしらった物がいくつもあります。そういう意味で、源氏物語を専攻していたのが、雇ってもらえる鍵だったのかもしれません。当時から今でも、楽紙舘の商品は、文学的なものを入れたものを作りたいというのが、舘主の方針でした。

               

              楽紙舘の一筆箋は、源氏物語絵巻をデザインしている楽紙舘の旗艦商品)

               

              楽紙舘は、現在、12人で仕事をしています。仕事は、季節ごとに変えるディスプレイ、スタッフのスケジュール管理、仕入れ、事務的な仕事、展示販売での出張、そして何よりも、お店での接客の仕事があります。働きやすさという点と、一緒に働いているみんなが紙を好きという点で、良い職場だと思います。私よりも年上の人で、紙のことにすごく詳しい人もいます。みんな長く勤めてくれています。大変なこともたくさんありますが、今の仕事は楽しいです。

              (お店の中の太田さん)

               

              今は、スペースの関係でやっていませんけれど、前は和紙の手漉き体験なんかもやっていました。紙漉き体験では、小学校の卒業証書に使うものを作ってもらったりしていました。

               

              楽紙舘の本社は、上村紙株式会社という会社ですが、そこの上の人たちも、私たちがやりたい事をやっていいという雰囲気があります。自分の好きなことをやらせてもらえて、周りの人との関係も良いし、恵まれていると思っています。やりがいがあるので、こんなに長く続けることができたのだと思います。

               

              京都楽紙舘の女性店長

               (忙しい中、昼食を取りながらのインタビュー)

               

               

              “会社に入った頃には、和紙のことは全く知りませんでした。”

               

               

              楽紙舘の前会長の上村芳蔵は、和紙總鑑という全12巻の和紙の辞典を作る委員会での仕事に携わっていました。生産者一人ひとりを調べて、どんな紙を作っているかまで書いてあります。実際にどんな紙なのか、実物も入れています。今は、後継者がいなくなった漉き場の紙も掲載されています。これは、英語にも翻訳してあって、パリのルーブル美術館や、大英博物館には置いてあります。

               

              楽紙舘、和紙總鑑

               

              そういう会社の性格もあるのかもしれませんが、楽紙舘では、日本全県各地の手漉き和紙の生産者とお付き合いさせていただいております。ただ、紙漉き一本で生計が立たなくてなっているところも多いと思います。それで、後継者がいなくなっているところも多いです。

               

              今の社長をはじめ、特に、昨年99歳になった前会長は、常に新しいものに挑戦していると思います。私たちに、インテリアで和紙を使うということを、もうずっと前から、考えさせています。私が、入社したのが10年前ですから、その頃、既に、80歳代後半でした。

               

              最近は、紙の原料になる楮を作る人が減っていて、値段が高くなってきています。機械漉きの和紙はきれいでお値段的には安いけれど、お客さんには手漉き和紙の持っている温かみをも知ってもらいたいです。

               

              桜柄の和紙

              (桜柄の和紙には、春を伝える温かみがある)

               

              最近、越前に行ったら、雁皮(がんぴ、和紙の原料となる植物で、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)と並んで、よく使われる原料)を、栽培できるようになったとおっしゃっておられました。雁皮は、もともと、野生のものしかなく、さらに、成長が遅いのです。一年で育つようなものではないのです。だから、数が取れない。一方、雁皮を使った和紙は、滲みがあまりでなくて、光沢があるので、きれいです。かな文字等の字を書く際に使われています。三椏は、精巧な印刷にも耐えることができます。日本のお札にも使われるぐらいです。そういう特徴があります。

               

              又、お客様とお話する中で、だんだんと和紙について勉強させていただくことができました。温かみのある和紙

              (和紙には、色々な種類がある。その素材によって、光沢、肌触り、厚み、見た目、全部違ってくる。その触感は、洋紙のつるっとしたラッピングペーパーとは、全く違うものである。)

               

               

              確かに、太田さんは、商品や和紙について詳しい。インタビューを始める前に、何種類かの和紙を買うので、それぞれの紙の性質について、教えていただいた。どんどん、新しい質問をしても、しっかりと答えられていく。 紙の性格や色合いについても、的確だった。又、今回、お店を訪れる数日前に、土佐の典具帖紙を見たいと電話で聞いた時、たまたまその日は太田さんが休みの日だったが、電話に出られた店員の方に伺ったところ、その人が詳しく教えて下さった。更に、数日後にお店を訪れた時に、自分が典具帖紙について質問していたことが、太田さんにしっかりと伝わっていた。電話で、「和紙はお好き?」の橋本ですと、最初に挨拶しただけだったのに、これには驚かされた。素晴らしいチームプレーだった。

               

               

              “普段使いで、生活の中に和紙を使うことを提案しています。“

               

              私たちが心がけているのは、紙の使い方を提案していくことです。その中では、特に、インテリアで使うのが、入りやすい切り口だと思います。今まで、和紙を使ったことが無い人は、この紙ってどういう風に使えばいいのって、質問されることがあるんです。そういう方に、灯りに和紙を使うのを奨めるとか、普段使いで温もりを感じてもらえるようにディスプレイを心がけています。

              緑いろの和紙は、インテリアに使える

              (緑色の和紙を取り混ぜて、インテリアのアイデアが浮かぶ。左から、土佐板締め紙、阿波雪花染紙、オリジナル雲龍板締め紙、黒谷型染紙、楮もみ金砂子)

               

              今は、デジタルの時代ですよね。そんな今だからこそ、実際の紙の手紙を渡せば、喜んでもらえると思っています。誕生日のカードや、お礼状とか。例えば、文香なんかも、手紙を開けた時に、手紙に添えて入っていれば、受け取った相手の感じる印象は、デジタルでは絶対に味わえないものです。自分でも、時々、紙を使ってカードを作ったりします。この事について、太田さんは、自信を持って話をされていました。

               

              楽紙舘の文香

              (文香は、手紙の中に一つ入れておくと、受け取られた方が開封した時に、香りがする。生活に潤いを感じさせる商品で、わずか280円で五種類のカラーが入っている。)

              この商品は、こちらからお求めすることができます。

              http://www.doyoulikewashi.com/?pid=127728857

               

              楽紙舘の一筆箋

              (源氏物語をあしらった一筆箋は、楽紙舘の旗艦商品。ちょっとしたお礼を一筆箋に記して、文香を忍ばせて差し出せば、貴方の株が上がることは間違いないです。)

               

              昔は、紙を買う方は、全紙(90cm X 60cm)でお買い求めされることが多かったです。しかし、最近の需要家は、もっとサイズの小さい紙、例えばA4ぐらいを、何種類も買っていく方が増えています。和紙を使う人といえば、版画、切り絵、ちぎり絵、和紙人形、折り紙と用途は様々ですが、それぞれのニーズにあった物を提供できるようにしていきたいんです。だから、全紙でなくても良いのです。

               

               

              “私たちの仕事は、漉き場と消費者の間に立っていると思っています。“

               

              例えば、ディスプレイを変えたら、売れ行きが違ってくることが良くあるのです。それと、季節性については、とても気を使っています。今の季節(暮れ)だったら、赤とか金を使ったようなものが良く売れます。ハロウィンの頃には、それに合った商品を出して、見せるようにしています。

              楽紙舘の金小紋かんはた

              (金小紋かんはた)

               

              消費者の方は、島根地方の漉き場には、普段からは行きにくいと思います。しかし、楽紙舘は、京都の市内の交通の便のいい所にあるので、うちにいらっしゃれば、それが手に入ります。うちにいらしてくれれば、土佐紙も、美濃も、越前とも、日本各地の和紙を、比べることができます。

              草木染めの箸置き

              (楽紙舘の商品:島根県の和紙メーカーの作った草木染めの箸置き)

               

              外人の方も、お店にはよくいらっしゃいます。和紙について、大変よく研究されていて、京都にいらして楽紙舘をめがけて来られる方もいます。比較的、ヨーロッパの方が多いように感じます。そういう方たちも、日本全国の漉き場に行くわけにはいかないから、私たちが間に入っているわけです。

              京都楽紙舘の和紙

              (楽紙舘のお店の棚には、日本全県から集めた色々な和紙が揃っている。)

               

               

              “インタビューアーの独り言”

               

              インタビューを受けてくださった太田さんに、大変感謝しています

               

              当ブログでは、クリエーター、和紙や和雑貨の生産にたずさわる人々や、日本文化の承継者の方々を中心にしてきましたが、その視点だけでは何か欠けていると、常に感じていました。クリエーターだけに焦点を当てていると、和紙、和雑貨、日本文化を最終需要家に販売している多くの人々がいるのを忘れがち。そういう意味で、実際に、クリエーターや消費者の仲介をしている今回の太田さんのインタビューは、絶対に欠かせないピースです。

               

              太田さんと商売の話をしていると、その知識の深さに圧倒されます。このインタビューでも、雁皮、三椏などの和紙の説明もさることながら、一番びっくりしたのは、どうやれば、需要を掘り起こすことができるかを、常日頃から、深く考えていることでした。まさに、現場の声を聞かせてくれました。30代前半の年齢で、そういう意識を持っておられることに、びっくり、いや、素直に感激しました。それだからこそ、楽紙舘でも、太田さんを店長に任せているのだろうと想像します。

               

              クリエーターだけでは、あくまで自分が作りたい物を創ってしまう。しかし、販売をする人は、その商品の良さをどういう風に、お客様に伝えていくかを、必死に考えて実行しているのです。今回、太田さんが語ってくださったことは、和紙の成長は、インテリアに使うこと、そして、普段使いをお客様に届けるということでした。こういう視点が、生産者やクリエーターにも、必要なのではないでしょうか。そして、それは、和紙や和雑貨だけではないはずです。時代から、取り残され始めている古典芸能や、コスト面でなかなか勝てない商品を販売している店などにも通じるものがあると思います。

               

              この記事が、この業界に入ってみたいと思っている女性や若い人たちにとっても、役立つ記事になればと思っています。とにかく、今の仕事が楽しいと自信を持っている太田さんの言葉は参考になると思います。


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                季節の話 ] 799年前の一月の大雪の日、源実朝が暗殺された


                JUGEMテーマ:日記・一般

                 

                きょうは、雪が降り始めています。

                天気予報では、10センチぐらい積もるとか。

                今朝は、熱海の沖合に、フェリーが停泊していました。

                向こうに見えるのが、伊豆半島。

                一番、左が川奈。小室山、大室山が見えます。

                天城連峰は、雲の中。

                熱海の沖合

                 

                真鶴は、頼朝が挙兵に失敗して千葉に逃げた船が出航したところです。

                 

                源氏では、源実朝は、歌人として有名で、

                その歌は、百人一首に取り上げられているぐらい。

                鉄騎集団の源氏には珍しいキャラの持ち主。

                しかし、その実朝は、大雪が降った1219年1月26日、甥の公暁(くぎょう)に暗殺される。

                旧暦だから、同じ1月でも今とは違うのだが、1月の大雪の日というのは、今日と同じ。

                実朝が死んで、源氏は、血筋が絶え、執権の北条氏の治める世の中になっていく。

                思うに、源氏の存在とは、今のイスラミック ステートのような野蛮なものだったのだろう。

                しかし、実朝は別。

                彼の歌は、今でも人々に愛されている。

                写実的な歌風は、万葉集に共通するという。

                そういった歌を後世に伝えた媒体が和紙。

                和紙は千年もつと語った芳澤一夫画伯の言葉通り。

                 

                その実朝の代表的な歌を紹介します。

                 

                世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも 

                (世の中は、いつも変わらずにあってほしいものだなぁ。渚(なぎさ)を漕ぎ行く漁師の引き綱をみると、胸が打たれるのだ。)

                (現代訳は、趣味時間さんからお借りしました。https://hobbytimes.jp/article/20161012a.html)

                 

                大海の 磯もとどろに 寄する波 割れて砕けて 避けて散るかも

                こちらは、文字通りの磯の海に砕け散る波の様子を、写実的に詠んでいます。

                 

                絵にしたらこんな感じでしょうか。

                 

                 


                0

                  季節の話 ] ダイヤモンド富士


                  元旦から既に、20日も経ってしまった。

                  信じられないくらいの勢いで、日にちが過ぎていきます。

                  今年の初めにたてた計画が、計画倒れになろうとしている。焦り!

                  しかし、ここで、諦めてはいけない!!!

                  毎日の積み重ねこそが大事。

                   

                  ダイアモンド富士

                   

                  お正月に、山梨の友人から、ダイヤモンド富士の写真を送ってきてくれました。

                  ダイアモンド富士というのは、頂上から陽が昇ってくるその瞬間の輝きをダイヤモンドに例えているのです。

                  初日の出を、その方のお知り合いが撮ったものだそうです。

                  これが、実に、素晴らしいので、ちょっと時間が経ってしまいましたが、紹介させていただきます。

                  上の写真は、まさに、日の出の瞬間。

                  そして、下の写真では、もう少し富士山がはっきり映っています。

                   

                  ダイアモンド富士


                  ちょうど、3年前の今の季節。

                  写真を送ってくれた方のご主人が他界された。

                  寡黙だけれど、ご自分の信念を持ち続けて普段からの日々を送られていた方だった。

                  まさに、このダイアモンド富士のような、光を放っていた方だった。

                  筆者とは正反対で、計画したプランを確実に毎日、実行されている方だった。

                   

                  その奥様は、今、去年秋に生まれたお孫さんの顔を見て元気に過ごされている。

                  きっと、亡くなられたご主人も、どこかでにこやかな顔で、見守っているのだろう。

                   

                  JUGEMテーマ:日記・一般

                   

                   

                   


                  0

                    能楽 ] 能の三大秘曲の一つ「乱」を見てきました。


                    JUGEMテーマ:日記・一般

                    JUGEMテーマ:能楽

                     

                    きょう、1月14日は、横浜にある久良岐能楽堂に行って、

                    「乱」という番組を見てきました。

                    猩々乱ともいうそうです。

                     

                     

                    金春流の山井綱雄師がシテです。

                    山井師は、先月、京都で金剛流の豊嶋宏一師との異流協演を見てきたばかりです。

                     

                    今日の演目の「猩々乱」は、中国の話だそうです。

                    猩々というのは、海に棲む夢の動物ですが、基本は猿とのことらしいです。

                    酒を飲むのが大好きで、高風という男に福をもたらし、

                    ある晩、二人で酒を酌み交わすというストーリーです。

                    鼓の音が舞台に響く中、猩々が舞います。

                    その猩々役がシテの山井師。

                    目の覚めるような赤とオレンジの装束を着て舞います。

                    そして、酒を飲んでいるせいか、足が乱れているところから「乱」(みだれ)と名付けられたようです。

                    能楽は、これで二度目でしたが、楽しんできました。山井師のシテの舞いが圧巻でした。

                     

                     

                    実は、その山井師には、インタビューをお願いして、

                    11月と12月にお話を伺ってきました。

                    近いうちに、当ブログで発表できると思います。

                    なお、山井師の次の演目は、千葉で行なわれる青葉能で舞われる「夕顔」が、2月17日です。

                    なお、横浜上大岡にある久良岐能楽堂は、広い林の中にひっそりと建っています。

                    とても大都市横浜の一角とは思えない場所です。

                    近くにお住まいの方で、行かれたことが無い方には、

                    是非、お奨めの場所です。

                    下の画像で見るより、ずっと素晴らしい雰囲気のところです。

                     

                     


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